zebraexの遍歴

読むかどうかはともかくとして

アーティファクト殺し

僕たちは公園で遊んでいる。友達のひとりが、プラスチックの小さなフォークの話をする。
それは肉でも、鉄でも、何にでも突き刺せてしまう神秘のフォークで、実に危ない代物なのだが、今は気が狂った男が持っているという話だった。
力を合わせて男からフォークを盗み出そうという事になって、男が目を離した隙に、僕たちはフォークを盗み出すことに成功する。
激高した男が追いかけてくる。男は懐から水鉄砲を取り出した。友人が言うことには、こちらも撃たれたものが死んでしまう物騒な代物である。
僕は神秘のフォークで水鉄砲を突き刺す。水鉄砲の力は失われ、同時にフォークも平凡なプラスチックのそれに変化する。

雨が何日も降り続いた。
その雨がいつまでも止まないので、家に親戚のおじさんたちが集まってくる。
僕が世界の秩序を壊したから雨が降るのだ、と彼らは口々に僕を責める。
アーティファクトは世界の歪みであったが、その歪みを許容することで、人が暮らせる世界が維持されてきたのだ、と。

騒ぎをよそに、僕は家の中からぼんやりと厚い雲を見上げている。
万物の根源は無にあって、アーティファクトが失われた今、世界は無に帰ろうとしているのだ、と僕は考え始めていた。

雨が止むようすはない。