zebraexの遍歴

読むかどうかはともかくとして

兄と電磁砲

学校が終わって家に帰ると、自分の部屋で、兄が得体の知れない機械を組み立てていた。
苦情を言う気持ちも失せて、私がその機械を見上げていると、兄は伸びたコードの先にあるスイッチを押す。機械はうんともすんともいわなかったが、しばらくして、外で身を震かせる轟音がした。
慌てて外に出ると、近くのビルにポッカリと穴が開いている。兄の組み立てていた電磁砲から打ち出された弾丸が貫通したのだ。
私はひどく動揺するが、兄は満足そうな表情をするばかりで、何の心配もしていないようだ。私はさらに狼狽する。

ビルの下に人が集まってくる。雑貨店の女主人が、あれはきっとUFOの仕業だよ、と小声で囁いたが、真実を知る私は曖昧な笑みを浮かべるしかないのだった。

兄は浮かれた足取りで家に戻ると、機械を調整して、再度スイッチを手にする、私はそれを止めようと考えていたが、なぜか傍観してしまう。
ビルに空いた穴がわずかに震えて、UFOらしき船影がサーチライトに浮かび上がる。私が驚きの声をあげると、兄が事も無げにあれは政府の観測機だよ、と笑った。なおまずいではないかと、私は、兄の手を引いてその場から離れるのだった。

私たちは追跡者の目を恐れながら夜明け近い繁華街をうろついている。私の胸に刻まれた刺青のおかげで、政府の手下であるヤクザどもは私たちに手を出すことができない。しかし、それも時間の問題だという確信がある。
不安の中で、自暴自棄になりつつあった私は、もはやこのまま兄とずっと逃避行をするしかないのだ、と考えている、しかし、そこには恋愛感情に似た高揚があるのだった。


2011-08-24