zebraexの遍歴

読むかどうかはともかくとして

先生の町

俺の田舎の町に先生と言われる人がいて、とんでもない人気なのだ。元は代議士だったらしいが、今は違っていて何をやってるかはよくわからない。だけど、みんな先生と呼んでいる。町は過疎化が著しかったが最近は少し持ち直して都会のチェーン店などがやってくることも多くなったんだけど、それも先生のおかげだと皆が口々に言っている。本当かどうかはわからない。
祭りとかで、来賓紹介で先生の名前が呼ばれると一際盛り上がる。みんなが口々に「先生!」「先生!」と叫んで、婆さんなんか涙ぐんだりしている。
先生はというと来賓席の奥の方で、控えめに立ち上がって歓声に応えている。スーツを着た痩せた中年のおっさんで、頭は禿げ上がっているんだけど、笑うとなんだか少し照れているような印象も受けて、そこがまたなんか謙虚で印象がいいんだ。
夏休みに実家に帰った時、甘味処で友人と善哉を食べながら将来の相談をしていたら、ふらっと先生が入ってきた。店がちょっとしたお祭り騒ぎになって、みんなスマホで先生の写真をとっている。女子高生が並んで撮ったりもしている。相変わらず、すごいなあと思って見ていたら、友人が先生にも相談してみなよ、というから、いやでもこんな個人的なことを、と思ったんだけど友人がすごく勧めるものだから、かき氷を食べていた先生のところに行った。
先生は俺たちにきづくと、いつかみたあの照れたような笑みを浮かべて、こいつが相談事があるんです、という友人の言葉に、力強くうなずくと、そこに座って話すように言ったんだ。
俺は、きっと忙しい人だから手短に話さないと、と思ったのもあって、すごい下手な話し方になったんだけど、先生は全然気にする様子もなくてうんうん、と時々すごく優しそうな顔になって俺の話を最後まで聞くと、俺の内心を見透かしたような、とても力強いアドバイスをくれた。
俺たちが感動して、礼を言って帰ろうとしたら、店の主人が良かったね。今日のお代は全部先生が払ってくれたから、といって、さすが先生だなあ、と思ったのだった。